布施信彦 医師

布施信彦 医師  職業 企業コンサルタント 専門 bio technology 生命の起源、細胞の分化、進化に感銘を受け 生殖医療の世界に入る。 産科クリニックにて勤務 体外受精のバイオラボにて培養の研究を行う。 スタンフォード大学のバイオラボに参画。 人工授精、体外受精の研究に取り組む。 米国産学共同事業を通じて、シリコンバレーの投資案件に関わる。 ここより医療コンサルタント業務を開始。 米国の大手製薬会社、医療機器会社、ドイツの医療大手企業のシリコンバレーにおける投資案件に関わることになる。 企業

生物の歴史は一言で言うと、『環境変化への適応の歴史』といえます。 布施信彦 医師

生物の歴史は一言で言うと、『環境変化への適応の歴史』といえます。                   布施信彦 医師

 

 

 

新型コロナウイルスに対するワクチンは当初難しいと考えられていた。

RNAウイルスであるコロナウイルスは、常に遺伝子転移(ミューテーション)を起こし続ける。つまり姿をどんどん変えて行くからで、仮にその時の姿に合わせてワクチンを製造しても、出来上がる頃には、すでにウイルスは違う姿になってしまっていて、効力がなくなると考えられていたからです。

この理屈は今も変わらないのですが、幸運だったのは、ウイルスがその性質をどんどん変えたが、全体として、『まだ、そこそこ似ていた』ということです。

このため、このパンデミックの間、最初に作ったワクチンが有効な効果を示し続けたのです。

もちろんミューテーションがもっと早く、(十分早かったが)、時間をかけて転移が進んでしまえば、ワクチンをその時々で、作り替えないと当然効かなくなります。

 

生物の歴史は一言で言うと『環境変化への適応の歴史』と言えます。

 

人類の歴史上、感染拡大つまりパンデミックが時折存在した。もちろんその度に適応するわけですが、環境の変化にはある程度の連続性がある。少しづつ

変化するのです。このため、人間を含めたすべての生物は少しずつ適応できる。

数年前のウイルスと今年のウイルスは違ったとしても、似ている。

だから、症状もそこまでひどくならない。なぜか。すでにある程度、以前のウイルスに適応してきたからです。

 

だが、今回のウイルスは違った。以前からあった「コロナウイルス」だが、姿が違う。

違和感のある現象です。

しかし、それも含めて、人類は「適応できた」ことになります。    布施信彦 医師

 

 

ノーベル生理学・医学賞にカリコ氏ら コロナワクチン開発貢献

2023年10月3日 0時26分 

ことしのノーベル生理学・医学賞の受賞者に新型コロナウイルスのmRNAワクチンの開発で大きな貢献をしたハンガリー出身で、アメリカの大学の研究者カタリン・カリコ氏ら2人が選ばれました。

スウェーデンストックホルムにあるノーベル賞の選考委員会は日本時間の午後7時前に記者会見し、ことしのノーベル生理学・医学賞に、新型コロナウイルスの「mRNAワクチン」の開発で大きな貢献をした
ハンガリー出身で、アメリカのペンシルベニア大学の研究者、カタリン・カリコ氏と
▽同じくペンシルベニア大学のドリュー・ワイスマン氏の2人を選んだと発表しました。カリコ氏らは人工的に合成した遺伝物質のメッセンジャーRNA=mRNAをワクチンとして使うための基礎となる方法を開発しました。mRNAにはたんぱく質を作るための設計図にあたる情報が含まれています。

これを人工的に設計し、狙ったたんぱく質が作られるようにして体内で機能するようにすればワクチンとして使うことができると期待されていましたが、mRNAは、ヒトに投与すると体内で炎症が引き起こされるため、医薬品に使うのは難しいのが課題でした。

カリコ氏らはmRNAを構成する物質を別の物質に置き換えることで炎症反応が抑えられることを発見し、2005年に発表しました。さらに、置き換えられたmRNAを使うと目的とするたんぱく質が劇的に効率よく作られることを発見し、医薬品として扱う上での大きな壁を取り除きました。この技術をもとに製薬会社がワクチンの開発に乗り出し、新型コロナのパンデミックでは記録的な速さでワクチンの開発に成功しました。この技術の柔軟性はほかの感染症のワクチンの開発にも道を開き、今後、がんの治療などへの応用が期待されています。

 

受賞が決まったカタリン・カリコ氏は、ノーベル財団との電話インタビューで「私は電話がかかってきたときに寝ていて、受賞が決まったという連絡は夫が受けました。誰かが冗談を言っているのかと思いました」と話していました。

また、これまでの研究の道のりを振り返り、「10年ほど前、ペンシルベニア大学から追い出されましたが、夫が私を支えてくれました。私の母は2018年に亡くなりましたが、『あなたがとるかもしれない』とノーベル賞の発表をいつも確認していました。母は『あなたは一生懸命頑張っている』と言ってくれていました。家族は私を信じてくれていて、娘たちも私が懸命に働く姿を見てくれていました」と述べ、周りの支えがあったことを話していました。

そのうえで「私は女性として、母として、同僚の女性の科学者たちに対し『家庭を持つことと科学者でいることのどちらかを選ぶ必要はない』と伝えています。子どもはあなたをみて、見習います。あなたが子どもの模範になることが重要なのです」と女性の科学者たちを激励しました。

また「多くの若い人たちは、友人や同僚がどんどん昇進していくのを見て、あきらめてしまいます。しかし、自分をあわれに思っている時間はありません。次に自分に何ができるのかを探すのにエネルギーや時間を費やすべきなのです」と、科学者たちを鼓舞することばを述べました。

 

ノーベル賞の選考委員会は授賞理由について「2人の発見は、2020年初頭に始まったパンデミック新型コロナウイルスに対して効果的なmRNAワクチンの開発に不可欠だった」としています。

その上で「mRNAが免疫システムにどう相互に作用するかについて私たちの理解を根本から変えた画期的な発見を通じて、2人は、現代における人類の健康に対する最大の脅威の1つだったパンデミックで前例のないスピードのワクチン開発に貢献した」と評価しています。

また、授賞が決まったことを伝えた際のカリコ氏とワイスマン氏の様子について「2人はとても喜んでいた」と明らかにしました。

このうちカリコ氏は「とても感激した」と話したということです。

ワイスマン氏には選考委員会が公式発表する数分前に連絡が取れたということで「彼は感激していて、非常に感謝していた」と述べました。

記者会見では、新型コロナウイルスのmRNAワクチンの安全性についての質問も出されました。

これに対してノーベル賞の選考委員会は「mRNAワクチンの接種は始まってまだまもないが、すでにのべ130億人が接種を受けている。副反応も限定的で大きな懸念とは考えていない。有害事象として特に若い男性で心筋炎が出ることがあるが、ほとんどの場合は軽度で、特に長期的な影響なく解消するということだ。コロナに感染する方が長期的な健康への影響がある」と述べました。

また、ワクチンに反対する動きがあるなかで、科学界や医療界はどう対応し、どう説明すべきか問われたのに対しては「このワクチンがどのように機能するのか、引き続き仕組みを説明していく必要がある。新型コロナの場合、mRNAワクチンの開発が大きなニーズを受けて、加速したのは事実だが、臨床試験が短い期間で行われたからといって安全性の確認が省略されたわけではない。臨床試験がどのように行われたのかや、数十年に及ぶ基礎研究が行われてきたことについて伝えていくべきだと思う。ノーベル賞の受賞によってこうした事実に光が当たることを願う」と説明しました。

 

カリコ氏とワイスマン氏が所属するペンシルベニア大学は、授賞発表の直後にSNSにコメントを投稿し「2人を誇りに思う。画期的な発見は世界的なパンデミックという難題を克服しただけでなく、今後、数十年にわたり他の多くの病気の治療と予防に大きな影響を与えるだろう」と祝福しました。

SNSには事前に撮影されたとみられる2人のインタビュー動画も投稿されていて、カリコ氏は「母が、『毎年10月にはあなたがノーベル賞をとるのではないかと思ってラジオを聞いているの。ずっと努力しているから』と言うので、わたしは『たくさんの科学者が大変な努力を続けているのよ』と説明したものです」と笑顔で語っています。

ワイスマン氏は「ノーベル賞は科学者にとって最も重要な賞で、大変な名誉です。私たち2人が力を合わせなければ、この研究は達成しえなかったと思います。これがとても重要なことだと思います」と話しています。

 

 

ドリュー・ワイスマン氏はアメリカ東部マサチューセッツ州生まれです。1987年にボストン大学で免疫学と微生物学の博士号を取得したあと、アメリカのNIH=国立衛生研究所に所属し、感染症研究の第一人者、アンソニー・ファウチ博士のもとでHIV=ヒト免疫不全ウイルスの研究を行いました。

その後、1997年からペンシルベニア大学に移り、ワクチンや免疫関連の研究を続けていたころにカリコ氏と出会い、2005年、ワクチン開発に道をひらく研究成果を共同で発表しました。

所属するペンシルベニア大学によりますとワイスマン氏は現在、次のコロナウイルスの流行に備えたワクチンの開発のほか、同僚とともにmRNAの技術を使ったがんの治療薬の開発にも取り組んでいるということです。

 

受賞が決まったドリュー・ワイスマン氏は、ノーベル財団との電話インタビューで、受賞が決まったという連絡はカリコ氏から受けたことを明らかにし、「本当かどうかわかりませんでした。誰かが僕らをからかっているんじゃないかと思ったんです」と当初の心境を説明しました。

そのうえで、受賞が決まったことについては「生涯の夢であり、ノーベル賞は仕事に対する究極の評価で、すばらしい経験です。ノーベル賞の受賞はいつも夢でしたが、実現するとは想像していませんでした」と喜びをあらわにしました。

また「私たちが一緒に研究していた20年間は、mRNAワクチンがなんであるかを知っている人も気にしている人もいませんでしたが、私たち2人は机を並べて一緒に研究し、新しいデータについて話したり議論したりしていました。2人とも睡眠障害があるので、午前3時から5時くらいになると、新しいアイデアをメールで送り合っていました」と述べて、当時のエピソードを紹介し、カリコ氏と取り組んできた研究生活を振り返っていました。

 

WHO=世界保健機関のテドロス事務局長はカリコ氏とワイスマン氏の受賞が発表されると自身のSNSに「本当におめでとう」と投稿して祝福しました。

そのうえで「彼らの発見が新型コロナウイルスのmRNAワクチンの開発を可能にした。彼らの科学への貢献が人命を救った」として、2人の功績をたたえました。